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Practice 実論

「デザインのチカラ」で提案された、さまざまなソリューション。
そんな、新たな解決方法の有効性を検証する上で、<考えたこと><発見したこと>、
そして実験のプロセスなどを記録し、発見したことを公開する。

カラスとそれ以外を識別できる?!
カラス識別器 制作Mailレポート

「ググれ!」「カラスに供物を捧げよ!」など、ワークショップ「デザインのチカラVol.1」で数々の名フレーズを残した、情報学研究科特定准教授にして、当プロジェクトのテクニカルディレクターの役割も担う、大島裕明先生。今回、「カラスのごみ問題」で提案した、カラスか否かを見分ける識別器制作の進捗状況の確認と、検証実験の取材をお願いしたところ、つぎのようなメールが届いた。「あまり順調とは言えないのですが、進捗はあります。ただ、いま来ていただいても何を見せられるか、微妙といったところです」。また、今回の検証作業以外にも当然、さまざまな仕事があるため、取材はむずかしいという・・・・・・。

もしかすると、まだなにも・・・・・・。不安な気持ちを抱きながらメールで状況報告をお願いしたところ、あっさりオーケー。すると、大島先生は忙しい最中、しゃべるように軽やかに、膨大な文字量とクレバーな熱量を伴ったメールにて進捗状況を報告してくれた。

 

 

―――大島先生が提案したのが、カラス識別器。今後の展開としてはカラスが来るとライトがついたり、スプリンクラーのように水を噴射したりしてカラスを追い払う。その要となる、識別器制作の進捗状況とは・・・・・・?

 大島です。あまり順調とはいえないのですが、進捗はあります。ただ、まったく本題とは異なる環境整備のところで手こずっています。

 私はそういうことを専門的にやっているわけではないので、手元のコンピュータに、そういうことをすぐに試せる環境がありません。そこで、まず、環境整備を行うことから始める必要がありました。本題に入る以前の、その環境整備のところで手こずりました。

 しかし、今日やっとこさ、コンピュータのある設定が悪さをしているということが判明しました。
そのおかげで、これまで失敗していたところを乗り越えて、環境整備がほぼ終了しました。環境整備の作業に、とんでもなく時間がかかっていました。不毛な時間です。

 今回の作業ですが、一人、デザイン学の学生さんが手伝ってくれています。たまたまですが、彼の自宅のパソコンには「モデルの学習」をする環境が整っているということだったので、そちらで作業を進めてもらっていました。とっても、優秀な学生さんです。

 とりあえず、お試し程度で、カラス画像307枚、非カラス画像193枚を使って、「モデルの学習」を行って、それでカラスの識別を行ったところ、精度90%ぐらいで判別できました。

 ちなみに今回、カラスを識別するために大量の画像を用いる手法は「教師あり学習」と呼ばれる手法の一種です。手法の設定を変えていくと、精度が上がったり、悪くなったりもします。そんな無数にある選択肢の中から、良い精度になるものを探していくという作業が本当は必要になります。

 とはいっても、カラスとカラス以外を識別するのは、それほどむずかしいことではありません。たったの2分類です。画像認識の分野では、例えば、200カテゴリーの分類を行うコンペディションが行われていたりします。それに比べたら今回の識別はすごく簡単な問題といえます。簡単な問題だけれど、専門家ではない私がやるというところが問題点ではあるかもしれないですけどね。

 また、識別器が識別した結果を目で見て分かるような仕組みも必要です。「カラスがいます!」みたいな表示をする、わかりやすい外見を作るということです。

 実は今日、目で見てわかるようにする作業は、ほぼ終わりました。USBカメラで撮影している映像を表示して、「カラス発見」みたいな文字が出たり消えたりする、インタフェースをもつアプリケーションができあがっています。

 ただただ、インタフェースができただけですので、カラスがいないにも関わらず、「カラス発見」とか表示しています。ま、ひとつのイメージとしてスクリーンショットを添付してお送りします。

 

 

 インタフェース部分とカラス識別器をちゃんとくっつけて、カラスが見つかったかどうかが分かるアプリケーションにするには、「カラスがいるかどうかを判別する」プログラムを動かすコンピュータで、Apacheというプログラムをうごかして、Pythonという言語でなんかプログラム書いて、そこからまだいろいろとなにかする必要があるのです。ま、11月27日までには、何とかなりますよ。

 というわけで、おなかが減ってきたので、帰宅します。では。
(2016年11月11日0時20分03秒。深夜。編集抜粋)

―――専門外の立場からすると、とてつもなく複雑な作業が必要に見える。しかし、大島先生は、どこまでも飄々と、慌てる素振りも見せず、カラス識別器の制作を着々と進行させていた。次回、11月27日に開催を予定するワークショップに、大島先生はどんな識別器を持ち込み、どれくらいの精度でカラスを識別することができるのだろうか?ワークショップ当日を期待したい!

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